「アメリカ不動産で節税ができるって本当?」「税制改正で節税はダメになったんだよね?」このような問い合わせが定期的にあります。答えは両方とも「本当」です。今回は、税制改正後に日本居住者(個人)および日本法人それぞれの税金に与えるポイントを解説します。
この記事のポイント
- 2020年税制改正の対象は、「個人」のみ+アメリカ不動産の「建物」のみ
- 「個人」が建物を「法定耐用年数」により減価償却費を計算することはできる。
- 「法人」が建物を「簡便法」により計算することはできる。
- アメリカ不動産はアメリカの法律(税法、相続法)の対象となるため、保有によるリスクを十分に把握する必要がある。
背景と2020年税制改正
アメリカ不動産が人気となった背景には、日本不動産と異なり「中古の不動産であっても建物の比率が非常に高い」「中古市場が非常に活発であるため中古不動産についても価格が上昇している」という特徴があります。
日本にも多くの節税商品がありますが、そのほとんどは「値上がりしない」ことから、資産運用の観点からもアメリカ不動産の優位性を感じられている方が増えていると言えます。
加えて、2020年税制改正までは簡便法という減価償却の計算方法を用いることにより、多額の減価償却費を個人の給与や事業所得とぶつけることが認められていました。給与等にかかる所得税+住民税の税率は最大55.945%、不動産を売却するときの税率は20.315%(長期譲渡)ですので、節税の効果(差額の約35%)ととても大きいものでした。
2020年税制改正において、下記の取り決めが行われ節税に一定の制限が設けられました。
・「個人」において「国外中古建物」から生じる減価償却費を「簡便法により計算した場合」に、不動産所得に損失が生じたときは、償却費に相当する部分の金額は、生じなかったものとみなす。
この改正は、「個人」が「建物」の減価償却費を「簡便法」により計算することを規制しています。言い換えると、法律に従って下記の通り処理を行うことで税務上の恩恵を受けることは引き続き可能となっています。
・「個人」が建物を「法定耐用年数」により減価償却費を計算することはできる。
・「法人」が建物を「簡便法」により計算することはできる。
改正後のポイント
1.個人の場合
前述の通り、「建物」を「簡便法」で償却した場合には損益通算の対象となりませんが、「建物以外」については改正の対象とはなっておりません。建物以外の価値は、アメリカの鑑定士を通して「コストセグリゲーション」のレポートを取得することで把握することが可能です。この比率はまさに不動産ごとに価値が異なるため、現地の個別不動産を選定してくれる専門家から不動産を購入することが重要です。
一方で、少し角度は異なりますが、個人がアメリカ不動産を購入する注意点として「相続」の論点があります。詳細は別の機会に解説いたしますが、不動産はアメリカの法律に基づいて「アメリカ遺産税」および「プロベート手続き」の対象となってしまいます。元気なうちに売却することができれば良いですが、突然の万が一にも備えておくことも重要です。
2.法人の場合
法人は2020年の税制改正の対象とはなっていませんので、簡便法により減価償却費を計算することが可能です。一方で、法人は税率が一定に設定されていますので、「節税」ではなく「課税の繰延べ」の効果となるという点を理解しておく必要があります。
また日本法人でアメリカ不動産を購入する場合には、オーナーの相続の際にも「米国の遺産税」や「プロベート手続き」の対象とはなりません。この点は法人の有利なポイントといえます。
まとめ
アメリカ不動産は税務メリットは適法な権利として認められていますが、誤った処理は税務リスクを引き起こす可能性があります。税務調査などでトラブルを避けるためにも、日米の税法に精通した専門家に相談し、正確な会計・税務処理を行うことが大切です。
また、「個人」と「法人」それぞれの税務メリットを最大化することを目的とする場合には、次のことを事前に相談しておくことも重要です。
・どのような不動産を購入するのがベストなのか
・個人、法人どちらで購入するのがベストなのか
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作成者
合同会社Japan America Tax Solutions (JATAS)
代表 田中大輝 日本税理士、米国税理士